当院の表通りにある「レリーフ」と「御影石のベンチ」は、彫刻家 ケイト・トムソン、片桐宏典 による作品です。震災後、私たちがこの地で再度立ち上がり診療をまた始めようと決めた時に、両氏から当院とこの地域のすべての皆様に向けて贈られました。
「セブンデイズ」
この七枚組のレリーフ作品は、一週間をテーマとする7つの抽象的なフォルムによって「時間と自然のサイクル」を表現しています。千差万化するこの世界の中で、唯一変わることなく、悠々と流れる「時間」というものの存在の意味をこの作品は見る人々に問いかけています。自然はその圧倒的な力だけでなく、森羅万象、四季折々の変化など自然は我々の生活そのものなのです。
日本でも西欧でも、一週間のそれぞれの曜日の名前は、太陽を回る惑星に由来しています。それらは我々の生活に深く影響を及ぼし、多様な文化はその取り巻く環境に寄って自然や神々についての神話を持っています。まるで惑星の巨大な引力に包容され導かれるように。
素材となった大理石はレリーフに光を与え、この場を明るくするとともに四季折々の光の変化を微妙に反映します。夜は照明によって照らされ、通りを明るくすることでしょう。人々の心にも希望に満ちた明かりが灯りますように。
また、大理石はとても自然の肌触りを感じさせる素材です。ぜひ触っていただき、目が弱く見えなくとも触ることで作品のイメージやリズム感・素材を読むことができると思います。
わたしはこの作品「セブンデイズ」を通じて、3.11から復興しようとする人たちの心の手助けになりたいと思っています。7枚のレリーフとデザイン門扉、私の夫、片桐宏典制作の御影石のベンチが、旅する人々に安らぎを、そして家族や友人たちとの出会いの場となり、明日へ力を生み出し、未来への道を語り合う場となるよう心から切に願う次第です。
彫刻家 ケイト・トムソン
片桐宏典
日曜日
太陽(Sun/日)は、光と熱を与える、この惑星にあるすべての生命の源です。太陽は誕生、時間、生命、エネルギーの象徴です。このシリーズの中では「再生する春」のシンボルです。
月曜日
月(Moon)は虚空にあって、宇宙空間を彷徨う遊星や小惑星の衝突から地球を守ります。その引力は地球に潮の満ち引きを生み出し、潮流れにリズムを与えます。月の輝きは太陽の反射する光ですが、月の満ち欠けは、太陽系における地球に調和をもたらします。また、月は詩的なロマンティシズムの魅力そのものです。
火曜日
火曜日は火の星、火星(Mars)から命名されました。火は四大元素(火、土、空気、水)の一つです。この作品は焼き付くような夏の暑さを表現しています。火星は情熱と決断力の象徴でもあります。
水曜日
水曜日は水と英知の象徴、水星(Mercury)から命名されました。作品に表現されるリズミカルに打ち寄せる波は永続性と忍耐力の象徴です。
木曜日
木曜日は木星(Jupiter)です。空気と雷の象徴です。日本語では植物(樹木)でもあるので、この作品では秋の収穫、たわわに実った稲穂を表現しています。
金曜日
天空に燦然と輝く明けの明星、宵の明星として知られる金星(Venus)から命名されました。金星は愛と芸術、知性、豊穣そして創造性の象徴です。この作品では、海からの美しい贈り物である貝殻のフォルムにおいてフィボナッチ数が黄金比として成長していくさまを表現しています。自然におけるすべての生物はこのような成長のサイクルを持っています。
土曜日
土曜日は、西欧では土星(Saturn)、日本では土(大地)です。作品では抽象的に冬の山々、地球そのものや元素としての土を表現しています。このフォルムは同時に「家族」を表します。しかし最も重要なのは「階段/ステップ」を示していることでしょう。あたかも、釜石の人たちがこれから直面する高く険しい道のり、山々の高みに挑む困難と挑戦のように。それはレリールの前に置かれたオブジェに実際に刻まれたステップと同じく、その道のりは既に始まっています。
【リンク】
・作者ホームページ:浮島彫刻スタジオ UKISHIMA SCULPTURE STUDIO>>